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建物滅失登記について

建物滅失登記は、その滅失した建物が明確で、取り壊してすぐに申請する場合は、土地家屋調査士に依頼をせずに申請人自ら申請できる登記であると思います。
今回は、そのような建物滅失登記について記事にしていこうと思います。

建物滅失登記とは

(建物の滅失の登記)第144条 登記官は、建物の滅失の登記をするときは、当該建物の登記記録の表題部の登記事項を抹消する記号を記録し、当該登記記録を閉鎖しなければならない。 第百十条の規定は、前項の登記について準用する。

不動産登記規則144条

建物の滅失登記とは、建物が取壊しや焼失や災害等により使用目的を達することが出来ない程度に物理的に滅した場合にしなければならない登記です。
しかし、滅失したかの判断基準は必ずしも全壊である必要はありません。

建物が火災によって滅失したか否かは、その建物の使用目的となっている主要な部分が滅失し、その使用目的を達することができぬ程度に達したか否かによって、これを決定すべきである。

大阪地判昭和29・2・15

判例に滅失の判断基準が示されており、全壊していない場合は、その建物の使用用目的となっている主要な部分が滅失しているかを調査をし、滅失しているかの判断をしなければなりません。

再築、解体移転などの移築も滅失登記をしなければならない

既存の建物を取り壊し、その取り壊した材料を持って同一の場所に建物を建てるなどの再築をした場合には、取り壊した建物は滅失登記をしなければなりません。
また、既存の建物を取り壊し、他の場所に建物を建てるなどの移築をした場合も、取り壊した建物は滅失登記をしなければなりません。
しかし、既存の建物を取り壊さず、建物の基礎ごと他の土地に移動した場合は、滅失登記ではなく所在の変更登記をしなければなりません。
そのため、建物に大きな物理的変更が生じた場合は、滅失の有無について慎重な判断をしなければなりません。

建物滅失登記は義務である

(建物の滅失の登記の申請)第57条 建物が滅失したときは、表題部所有者又は所有権の登記名義人(共用部分である旨の登記又は団地共用部分である旨の登記がある建物の場合にあっては、所有者)は、その滅失の日から一月以内に、当該建物の滅失の登記を申請しなければならない。

不動産登記法第57条

建物滅失登記は、滅失の日から一ケ月以内に申請しなければならなく、その申請を怠った場合は、10万円以下の過料に処されます。
ちなみに、過料とはお金を払わなければならない金銭罰ですが、刑事罰には当たらないものです。
つまり、前科にはならないものとされています。
登記を怠り過料に課されたという話は聞いたことがないので、運用されていない罰則となっているのではないかと思います。
ただ、運用されてないんだったら、申請しなくてもいいという考えは危険です。
取り壊してから時間が経過すると、証明書等が手に入れられない等により滅失登記の手続きの業務量が増え、その費用も多くかかってしまいます。
建物を取り壊したときは、申請義務やその期間、罰則などを考えず、すみやかに滅失登記の申請をしましょう。

(過料)第164条 第三十六条、第三十七条第一項若しくは第二項、第四十二条、第四十七条第一項(第四十九条第二項において準用する場合を含む。)、第四十九条第一項、第三項若しくは第四項、第五十一条第一項から第四項まで、第五十七条又は第五十八条第六項若しくは第七項の規定による申請をすべき義務がある者がその申請を怠ったときは、十万円以下の過料に処する。

不動産登記法第164条

登記所の無料相談を利用しよう

法務局等の管轄である登記所は、登記申請の無料相談を行っています。
土地家屋調査士に登記申請を依頼しない場合は、必ず利用するようにしてください。
『滅失証明書』や『取壊証明書』がある場合は、かなり丁寧に指導して頂けると思います。
以下にさいたま地方法務局の登記相談のリンクを添付しております。
各都道府県を管轄する法務局・地方法務局のページを参照の元、登記相談のお問い合わせください。

埼玉地方法務局リンク

申請書の書類を作成してみよう

建物の滅失登記を申請するためには、その建物の面積や種類などの情報が必要になります。
そのため、事前調査として登記所で登記情報と建物図面・各階平面図と公図か地図を取得してください。
その取得した登記情報と申請人情報等を登記申請の該当欄に記入していくと申請書の完成です。

不動産登記の申請書様式について

必要な添付書類を用意しよう

法律上の添付情報ではありませんが、第三者が建物が滅失したことを証明した書類を添付することが登記実務では行われています。
例えば、火災によって焼失してしまった場合や取壊した場合にしなければなりませんが、消防署が発行する『滅失証明書』、取壊し業者が作成した『取壊証明書』などの第三者が発行する証明書を添付することが実務上の扱いとなってます。
また、災害等で建物に被害が生じた場合、市役所から『罹災証明書』が発行され添付することが実務上の扱いとなってます。
『罹災証明書』には全壊、大規模半壊、半壊、一部損壊などの記載がありますが、登記上の建物滅失と罹災証明書上の全壊等の記載事項は必ずしも一致するものではないことに注意しなければなりません。
このことは、使用用目的となっている主要な部分が滅失しているかが判断基準になっています。
これらの書類がない場合は、登記手続きのための調査が複雑になります。
さらに、建物が建っていた場所の写真を何枚か必要になる場合がありますが、基本的に建物滅失登記に図面は必要ありません。

こういうときは必ず土地家屋調査士へ依頼しよう

建物を取り壊した場合は取壊し業者が作成する『取壊証明書』、焼失した場合は消防署が発行する『焼失証明書』などの第三者が建物が滅失したことを証明した書類を用意できない場合は必ず土地家屋調査士へ依頼してください。
これらの書類がない場合、本当に取り壊したのかの証明ができないため、登記手続きのための調査が複雑になります。
なぜなら、建物が建っていた土地が空き地だったとしても、その建物が隣の土地に基礎ごと移動している可能性があるからです。
(このような建物の移動はえい行移転と言い、建物滅失登記ではなく変更登記をしなければなりません。)
第三者が建物が滅失したことを証明した書類を用意できない場合には、建物が建っていた土地だけではなく、その周辺の土地も調べ、過去にどのような建物が登記されていたかも調べます。
この調査ですが、建物が建っていた土地について過去に分筆や合筆がある場合、今はない(閉鎖した)土地の登記記録簿等も調べ、その土地上にも建物の登記記録が残っていないかなども調べる必要があるため、相当な労力が必要になりますので、専門家である土地家屋調査士にご依頼ください。

まとめ

ここまで、読んでくださりありがとうございました。
確かに建物滅失登記は、図面を作成しない等の関係上、土地家屋調査士に依頼せずに、自ら登記することが出来ます。
最終的には、お財布と相談して、土地家屋調査士に依頼するかを決めることをお勧めします。
大体の相場が6万円ほどのため、その労力に見合うかどうかで決めて頂ければと思います。
以下に、土地家屋調査士の報酬ガイドのリンク先を貼っておきますが、登記事案により調査内容が異なり、報酬額が異なる場合があります。

https://www.chosashi.or.jp/media/guide20190329.pdf
「令和元年 報酬に関する実態調査」に基づく各設問の回答報酬額分布図
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