境界と呼ばれるものには種類がいくつかあります。
土地は無辺に広がる自然物であり、人々はこれをその目的に応じて人為的に区切り、境を設けて利用しています。したがって、一口に土地の「境界」といっても、以下のように多様な種類があり、土地家屋調査士はこれらを明確に区別して、筆界やその他境の調査・鑑定を行っております。
以下に記載した例だけではなく、地域などによって呼び方が異なることがあります。
例えば、占有界や公物管理界のことを、管理界と呼ぶなど。
1.筆界(公法上の境界)
登記上の地番が示す土地の境、即ち「地番境」です。公的存在であり、不動産登記法理に由来します。従来、政省令等を除き法律には「筆界」という用語は存在していませんでした。平成 17 年不動産登記法の改正により、「表題登記がある 1 筆の土地(以下、単に「1 筆の土地」という。)とこれに隣接する他の土地(表題登記がない土地を含む。以下同じ。)との間において、当該 1 筆の土地が登記された時にその境を構成するものとされた 2 以上の点及びこれらを結ぶ直線をいう」と定義されました(不動産登記法 123 条)。また、従来「境界確定訴訟・経界確定訴訟」と呼ばれていた訴訟類型が「筆界の確定を求める訴え」と言い換えられました(不動産登記法 147・148 条)。これは、所有権界とは別個独立の存在として筆界を認めてきた従来の通説・判例の考え方を、立法的に初めて明確にしたものとされています。
2.所有権界(私法上の境界)
土地の所有権と所有権がぶつかり合う境です。私的存在であり、民事実体法理に由来します。一般に「所有権界あるところ筆界あり」、逆に「筆界あるところ所有権界あり」との事実上の推定が働きます。
通常、所有権界と占有界と筆界は一致するものとして扱われます。
3.占有界
法律上の権利の有無を問わず、事実的支配である土地の占有と占有がぶつかり合う境です。私的存在であり、ほとんどが民事実体法理に由来するものです。占有あるところ本権有りと推定されることから(民法 188 条)、「占有界あるところ所有権界あり」との推定が働きます。
たとえば、塀やブロック塀等によって隣地との管理をしていれば、塀やブロック塀等によって占有界が生まれ、その占有界が所有権界や筆界ではないとの反証がない限り、占有界と所有権界と筆界は一致していると推定されます。
また、地上権界や借地権界などの物権的土地支配権と他の土地所有権等とがぶつかり合う境も、占有界に含まれます。
4.公物管理界
道路や水路等の公物管理者が公物の機能管理を行うために境界明示する土地の境です。公的存在であり、公物管理法理に由来します。公物の「機能管理」は、所有権を基礎とする「財産管理」とは異なる行政法上の作用であり、公物管理界と所有権界、筆界とは直接的な対応関係はないとされています。しかし、ほとんどの実務では、公物管理界と所有権界と筆界は一致しているとされています。
役所との道路等に関しての、官民境界明示・官民境界協議手続きは、その役所が所有権に基づくものであれば所有権界を対象にしたものであり、公物管理法による道路区域等の管路権に基づくものであれば公物管理界を対象にしたものであるとされています。
5.行政界
行政区域を画する土地の境です。公的存在であり、行政組織法理に由来します。都道府県の境界は、市町村の境界に従います。市町村界、郡界、字界は、一定区域内の一筆地や道路・河川等を囲ったものであって、それぞれの境界が一筆地の縁であるときは、行政界は当該一筆地の筆界と一致します。
土地家屋調査士は上記の境を明確に区別して、筆界の位置を調査・鑑定し、登記申請します。