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使用人土地家屋調査士とは

使用人土地家屋調査士について、法律にその職務の範囲やその責任に関して明確に規定していません。
私は、土地家屋調査士法人に勤めていた時に、使用人土地家屋調査士として登録していました。
今回は私が登録していた時の実体験と、土地家屋調査士法人業務処理マニュアル(日調連発第 141 号、令和2 年 7 月 2 8 日)を参考にして、この使用人土地家屋調査士制度について記事にしていこうと思ってます。
ただ、私が勤めていたのは令和元年末までのことでしたので、今(令和2 年 7 月 2 8 日以降)は運用方法が少し異なるかもしれません。

使用人土地家屋調査士とは

「使用人土地家屋調査士(以下「使用人調査士」という。)」とは、調査士法人に雇用され、当該調査士法人の社員の指揮監督の下で、調査士としての資格・職能に基づき判断して業務を行うことができる者をいう。

土地家屋調査士法人業務処理マニュアル

土地家屋調査士法人業務処理マニュアルにて上記の定義付けがされています。

https://www.e-chosashi.or.jp/wp-content/uploads/2020/07/houjinmanual_200728.pdf
土地家屋調査士法人業務処理マニュアル(愛媛県土地家屋調査士会のサイト参照)

『社員』というのは、会社法上の言葉であり、役員のことを言います。

私が使用人土地家屋調査士になるまで

私は、大阪会で使用人土地家屋調査士として登録をしました。
ただ、土地家屋調査士として土地家屋調査士法人で働くためには、まず土地家屋調査士として登録をしてからでなければなりません。
個人としての土地家屋調査士の登録後、別途使用人としての雇用契約書を結び、所属の土地家屋調査士会へ届出をして、初めて使用人土地家屋調査士になることが出来ます。
この届出ですが、従事する事務所の土地家屋調査士会だけではなく、その土地家屋調査士法人が持っているすべての事務所の土地家屋調査士会へ届出をしなければなりません。
例えば、東京都と大阪府の2か所に事務所を持っている土地家屋調査士法人は、従事するのが大阪の事務所だけであっても、東京土地家屋調査士会への届け出も必要になります。
また、届出から新たな会員証を頂くまで2か月くらい掛かりかったため、手続きの時間が結構かかりました。

都道府県ごとに使用人の運用の仕方に違いがある

東京では職務上請求用紙は、事務所に一冊が原則ですが、大阪会は土地家屋調査士ごとに持つことが出来、それは使用人土地家屋調査士であっても、同様に申請すれば貰うことが出来ました。
使用人土地家屋調査士も含めて土地家屋調査士法人の取り扱いは、各都道府県の土地家屋調査士会によって運用の方法が少し違います。

使用人土地家屋調査士の責任の範囲は

使用人調査士に対して特定の業務(土地又は建物等)に制限を設けることは、調査士法人と使用人調査士との雇用契約に基づく調査士法人内部の規律であり、善意の第三者に対抗することはできない。この場合、法第 35 条の 4 に規定されるとおり、使用人調査士は調査士法人の社員と同一の責任を負うこととなる。

土地家屋調査士法人業務処理マニュアル

(社員であると誤認させる行為をした者の責任)第三十五条の四 社員でない者が自己を社員であると誤認させる行為をしたときは、当該社員でない者は、その誤認に基づいて調査士法人と取引をした者に対し、社員と同一の責任を負う

土地家屋調査士法35条の4

『日調連発第 141 号、令和2 年 7 月 2 8 日の土地家屋調査士法人業務処理マニュアル』では、使用人土地家屋調査士は以上のようなの責任を負うとされています。
しかし、法律等ではその責任について規定はされていなく、実際にその責任の範囲は曖昧なままです。
上記の規定を読むと、業務上で自らが社員であると誤認させる行為をした場合は同一の責任を負うのはもちろんだが、土地家屋調査士に関する業務で自らが行った行為に関しても社員と同一の責任を負うとの解釈なのかなと思います。

一方、土地家屋調査士法人の社員の責任は、法律に規定しています。

(社員の責任)第三十五条の三 調査士法人の財産をもつてその債務を完済することができないときは、各社員は、連帯して、その弁済の責任を負う。
 調査士法人の財産に対する強制執行がその効を奏しなかつたときも、前項と同様とする。
 前項の規定は、社員が調査士法人に資力があり、かつ、執行が容易であることを証明したときは、適用しない。
 民間紛争解決手続代理関係業務を行うことを目的とする調査士法人が民間紛争解決手続代理関係業務に関し依頼者に対して負担することとなつた債務を当該調査士法人の財産をもつて完済することができないときは、第一項の規定にかかわらず、特定社員(当該調査士法人を脱退した特定社員を含む。以下この条において同じ。)が、連帯して、その弁済の責任を負う。ただし、当該調査士法人を脱退した特定社員については、当該債務が脱退後の事由により生じた債務であることを証明した場合は、この限りでない。
 前項本文に規定する債務についての調査士法人の財産に対する強制執行がその効を奏しなかつたときは、第二項及び第三項の規定にかかわらず、特定社員が当該調査士法人に資力があり、かつ、執行が容易であることを証明した場合を除き、前項と同様とする。
 会社法第六百十二条の規定は、調査士法人の社員の脱退について準用する。ただし、第四項本文に規定する債務については、この限りでない。

土地家屋調査士法第35条の3

連帯して、その弁済の責任を負うとの規定から、有限ではなく無限に責任を負うため、そのような社員を無限責任社員と呼びます。
無限に責任を負うので、その責任は非常に重いものになります。

以上のように、社員は連帯してその弁済の責任を負わなければならない一方、使用人は特定の業務に関しては社員と同一の責任を負うと一般的には考えられています。

使用人土地家屋調査士のメリットは

無限責任を負わなければならないと、法律に規定されていないことだと思います。
もちろん、土地家屋調査士の仕事は国民の財産を扱う仕事であり、それは雇われている立場でも、それに対して責任を負わなければなりません。
ただ、土地家屋調査士法人に入る際に、まったく内情が知らないのにも関わらず、社員となり無限責任を負わなければならないのは、心理的ハードルが高いと思います。
このような時、まず使用人として登録をするのも一つの手段だと思います。
また、実務が未経験であったりする場合等に、まずは社員の指揮監督の下で仕事をする場合は、この使用人土地家屋調査士はおススメの制度なのかもしれません。

使用人土地家屋調査士のデメリットは

土地家屋調査士の業務が制限されてしまうことです。
使用人土地家屋調査士は、社員の指揮監督の下で、調査士としての資格・職能に基づき判断して業務を行うことができる者とされており、その仕事の範囲が限定されてしまいます。
例えば、役所に提出する図面等の作成者には代表権を有する社員のみなることが出来、代表権を有しない社員や使用人は作成者とならないとされており、それ以外にもできる仕事が限定されています。
ただ、『日調連発第 141 号、令和2 年 7 月 2 8 日の土地家屋調査士法人業務処理マニュアル』によれば、社員の指揮監督の下であれば、本人確認・申請意思確認行為、資料収集・分析、現況調査及び現地測量、立会い及び筆界確認行為、調査士としての資格・職能に基づく判断を必要とする業務として規則 93 条調査報告書の作成をすることが出来ると記載しています。
そのため、無資格者の補助者より広い範囲の業務をすることが出来ると考えます。

まとめ

今回は、使用人土地家屋調査士について記事にしてきましたが、この言葉が生まれたのも、平成14年に土地家屋調査士法人の設立ができるようになってからです。
使用人土地家屋調査士についてはまだ、その業務の範囲や責任の範囲はまだ不明確な部分が多いです。
使用人土地家屋調査士制度が今後発展していくことに期待します。

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