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日本測地系と世界測地系とその変換・補正について

今回は、日本測地系と世界測地系について、国土地理院の変換プログラムを使用して座標の変換や補正をしてみます。

ただ、これだけでは無機質になってしまうため、実際に旧座標系の基準点から新座標系の基準点を測り、その座標を標準地図や航空写真にプロットして、どのような感じになるのかを試してみたいと思います。
確かな答えがあるのではなく、変換や補正ソフトを使ってみて、どうだったかのかが伝わって頂けたらと思います。

そして最後に、私が実際に本案件で採用した測地系についても書いたので、あくまで参考として読んで頂けたらと思います。

是非、最後まで読んでくださると嬉しいです。

日本の測地系 | 国土地理院

上記の国土地理院のホームページに詳しいことが書かれているため、是非ご参照ください。
また、当記事においても、国土地理院のホームページの文言を引用をしております。

測地系とは

測地系とは、国またはいくつかの国からなる地域単位で採用され、測量、地図作成、土地の管理、大規模土木工事などの基準となる測地体系です。
国家測量機関が地球の形と大きさ、経緯度原点、高さの基準などの定義や維持を行っています。

国土地理院ホームページ引用

国土地理院のホームページにおいて、以上のように定義され、現在の日本が採用している測地系について以下のように記載してます。

日本が現在採用している測地系は、VLBIやGNSSなどの宇宙技術を利用して定めた「日本測地系2011」(JGD2011)といい、世界全体で共通に利用ができる世界測地系であるITRF(国際地球基準座標系)に基づいています。

準拠楕円体原子
準拠楕円体   測地基準系1980(GRS80)楕円体
長半径 6,378,137m
扁平率 1/298.257222101

国土地理院ホームページ引用

準拠楕円体とは、地球の形のよりどころとなる(=準拠)楕円体を意味します。

地球を完全な球体ではなく、赤道の半径が長半径になる楕円体を仮想の地球としてモデル化します。
そして、その楕円体に位置を投影することで、位置関係を把握することが出来ます。

その基準となる地球の形である準拠楕円形について、どれを採用したかで、その測量成果の位置関係は異なります。
日本では、ベッセル楕円体と測地基準系1980(GRS80)楕円体が採用されました。

以下に代表的な楕円体を引用します。

楕円体年代長半径(m)扁平率の逆数(1/f)
ベッセル楕円体18416,377,397.155299.1528128
クラーク楕円体18806,378,249.145293.465
ヘルマート楕円体19066,378,200298.3
International 1924(ヘイフォード楕円体)19096,378,388297.0
クラソフスキー楕円体19406,378,245298.3
測地基準系1980(GRS80)楕円体19806,378,137298.257222101
国土地理院ホームページ引用
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国土地理院ホームページ引用

この測地系と準拠楕円体(扁平な回転楕円体)の関係に関して以下のように測量法令等に記載されています。

世界測地系とは、測量法(昭和24年法律第188号)第11条第3項により、地球を次に掲げる要件を満たす扁平な回転楕円体であると想定して行う地理学的経緯度の測定に関する測量の基準をいいます。

一 その長半径及び扁平率が、地理学的経緯度の測定に関する国際的な決定に基づき政令で定める値であるものであること。
二 その中心が、地球の重心と一致するものであること。
三 その短軸が、地球の自転軸と一致するものであること。

国土地理院ホームページ引用

以上の要件を満たす、準拠楕円体(扁平な回転楕円体)に基づく測量成果が、世界測地系であると言えます。

日本で採用される準拠楕円体は、2001年以前はベッセル楕円体を、そして2001年以降から現在までは測地基準系1980(GRS80)楕円体を採用しております。
そして、その後は地震などの地殻変動による影響を補正し、それを考慮した測地系が世界測地系として使われています。

日本測地系とは

2001年以前の測量成果(経度、緯度)は、経緯度原点の座標を天文観測によってベッセル楕円体面に定めていた旧日本測地系で表現されていました。

国土地理院ホームページ引用

この日本測地系から世界測地系の間には、東京で450mほどのずれがあります。

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国土地理院ホームページ引用
3 日本測地系と世界測地系 | 国土地理院

日本測地系から世界測地系(2000)に変換するプログラムとして、「TKY2JGD」があります。

「TKY2JGD」は、2002年の改正測量法の施行以前に取得した日本測地系に基づく緯度、経度を、世界測地系である日本測地系2000(JGD2000)に基づく緯度、経度に変換するためのプログラムです。

国土地理院ホームページ引用
https://vldb.gsi.go.jp/sokuchi/surveycalc/tky2jgd/main.html

世界測地系とは

現在の測量成果は「測地成果2011」と呼ばれ、世界測地系2011(JGD2011)としてITRF(国際地球基準座標系)によりGRS80楕円体面に表現しています。

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国土地理院ホームページ引用

今現在は、世界測地系に基づく日本測地系2011(JGD2011)が採用されていますが、2001から2011までは世界測地系2000(JGD2000)が採用されていました。

世界測地系2000は、東日本大震災により地殻変動が起きたことにより、それを考慮した新たな世界測地系2011が採用されることになりました。
熊本地震の影響がある一部の地域を除き、日本では世界測地系2011が採用されています。
日本経緯度原点が東に約27cm移動したそうです。

地殻変動前の座標値から変動後の座標値へ補正するプログラムとして、PatchJGDがあります。

https://vldb.gsi.go.jp/sokuchi/surveycalc/patchjgd/index.html

これに適正な数値を入れると、世界測地系2000(JGD2000)と日本測地系2011(JGD2011)の数値をそれぞれ変換できます。
いわゆるパラメーター変換と呼ばれています。
ただ、この変換は広い範囲での移動を考慮した上で、推定される基準点の移動距離を計算したものであり、該当箇所の基準点が本当に計算後の数値なのかは、改めて測量をし直す必要があります。

実際に日本測地系の座標から世界測地系の座標を測り、その数値を変換する

高崎線桶川駅付近にあるの世界測地系の基準点を、日本測地系の基準点から測ります。
そして、測量して得た測量の数値を、上記のソフトウェアで変換と補正して、国土地理院が管理している座標値とどれくらいの差異があるかを確かめてみます。

以下の国土地理院が提供している世界測地系(測地成果2011)の基準点を使用します。

geodetic-transformation-1-min
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ちなみに、この基準点は下の欄に座標変換プログラムによると記載してあるため、

東日本大震災後に、実際に再度測量した成果ではなく、成果2000の値にパラメーターで補正した想定値になります。

位置は以下の場所にあります。

geodetic-transformation-2-min
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近くの日本測地系の基準点から、10A87を測量すると、

Xが-797.355、Yが-23798.608でした。

その数値を、WEB板のTKY2JGDを使用して、日本測地系から世界測地系(2000)に変換してみます。

geodetic-transformation-4-min
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上記のTKY2JGDを使用して得た数値を、地殻変動前の座標値から変動後の座標値へ補正してみます。

geodetic-transformation-3-min
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変換や補正をしたところ、最終的にXが-422.558 Yが-24091.396という数値なり、国土地理院が公開している、Xが-442.828、Yが-24091.012と数値と若干(約20cm)ですが、相違が生じました。

世界測地2011の座標値上に、これまでの変換前と補正前の座標値を実際に図面上にプロットして、その位置関係を確かめてみます。

geodetic-transformation-9-min
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geodetic-transformation-10-min
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日本測地系(旧座標系)と世界測地系は約460m程離れており、東京付近は約450mほどずれていることは確認できました。

しかし、国土地理院が公開している成果(10A87)の値と最終的に変換した値では、約20cmの差が生じてしまいました。
この数値の差を、広い地球規模で考えると、ほんの僅かで無いに等しいですが、人間には大きな誤差に感じます。

ただ、国土地理院が公開されているデータは、実際に測量したものではなく、地震の移動距離を計算して算出した、あくまで推定の座標値であることもあり、また10A87が道路工事等で移動した可能性もあります。

測量技術者は、このようないろんな背景を考慮して、その現場ごとの測地系を選択しなければならないことを、今回改めて実感いたしました。

この場合における私が採用した座標値

今回、桶川駅近くで測量をする機会があり、いろんな測地系の座標値があったため、このような記事を書くことが出来ました。
この現場で私が採用した測地系は、日本測地系です。
なぜならば,道路台帳が旧日本測地系で作成されており、役所で平成26年くらいに日本測地系(旧)の基準点の精度の確認をし、基準点も多く現存していたからです。
また、道路台帳にある境界点と基準点の位置関係も正確であったことも、日本測地系を採用した理由です。

日本測地系で測量・調査した際の留意点

日本測地系に基づく測量を行った場合は、平成25年6月3日東京法務局民事行政部不動産登記部門総括表示登記専門官事務連絡を留意する必要があると考えます。

2 (3)当該基本三角点等が再測量又はパラメーター変換されていない場合は、当該基本三角点等を近傍の恒久的地物(規則第77条第2項)として取り扱い、その旨を調査報告書及び地積測量図に記録させるものとする。
3   平成23年3月11日より前の測量成果に基づく登記申請について、申請代理人である土地家屋調査士が当該測量成果の点検を行い、多角点及び筆界点の相対的位置関係に変動がない(公差の範囲内)場合に限り。その旨を調査報告書及び地積測量図に記録させるものとする。

平成25年6月3日東京法務局民事行政部不動産登記部門総括表示登記専門官事務連絡(抜粋)

と記載されており、

地積測量図には、『日本測地系』と記載し、基本三角点等の点名の横に『震災前の基本三角点等の成果に基づき測量』と付記するとされています。

また、規則第93条調査報告書には、『再点検を行った結果、筆界点の相対的位置関係に変動がない』旨を記載するとされています。

まとめ

私自身、この測地系について、試験勉強や講義などで勉強して、概念自体は知っておりました。
ただ、概念を知っているけれども、それを実際に使用しないのであれば、いくら一生懸命勉強しても、それは結局使えない知識となってしまいます。

測量実務をしていれば、少しは測地系を意識することはありますが、土地家屋調査士のような、比較的小さい一筆地の測量を主な業としている関係から、あまり意識することなく、実務を行っていたのが正直なところです。

最後まで読んでくださり、ありがとうございました。

この記事に関しては、調べ作成していますが、一部間違いがあるかもしれません。ご指摘等がございましたら、是非ご教示頂きたいと思ってます。

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