今回、東京都板橋区の公共用地(通路)との境界確定を無事に完了したため、その手続きの流れや、感じたことを記事にしていきたいと思います。 同業者の知り合いの話から、板橋区の境界確定は手間が掛かかるため、測量のお話は頂いた際には普段よりも高い値段で見積を作成すると、よく耳にしていました。 そのため、正直なところ、板橋区の案件のお声を頂いた際は、少し避けたいなとの感情が少しありました。
確かに、少し手間に感じることは多くありましたが、役所の方が適切な指示をしてくださり、また直ぐに対応して頂いたため、思っていたより、すんなりと完了した印象です。
今回書かせて頂く内容は、私の一認識であり、その時の担当者や土地ごとの様々な事情により変わることがあるため、あくまで一つの参考資料として読んで頂けたらと思います。
板橋区の公共用地の境界確定の流れ
業務フローの通り、記載していきますが、もしかしたら区役所での定義と、本記事で記載の説明に相違があるかもしれません。 また、期間に関しても、時期や担当者、その土地ごとに違うと思います。 そのため、協議の際には、担当の方ときちんと確認して頂きたいと思っています。
①土木部管理課の窓口で調査と②申出
土地の境界が既に確定しているのかを、窓口にて確認します。 確定をしていれば、その図面をもとに、あとは現地で道路境界を復元していくことになり、特段の事情がなければ、境界協議は必要ありません。
もし、確定していなければ、調査をする窓口とは別の境界確定の窓口で、境界確定をする旨をお伝えして、必要書類など用意する必要があります。
申請をするための資料は、窓口に行けば手に入れることが出来ます。また、ホームページ上からでもダウンロードし、それをプリントアウトしたものも使うことも出来ます。
申出の添付書類ですが、現況実測平面図も申請時に提出が必要なため、申請時に簡易な現況測量を終えている必要があります。
ただ、役所の担当者から、測量箇所の指示が後日あるため、申出の時点では現況の地物等を簡単に測るのみで大丈夫だと思います。
私は知らなかったですが、申出書書類チェックリストがホームページに公開されているため、書類の不備による二度手間を避けるためにも使用されることをお勧めします。
③申出書の添付書類確認・預かり、④申出書類の審査、⑤受理決定・区担当者決定
申出書を提出してから、担当者からの連絡が来るまで、所定の通り2週間程度の期間がありました。 区担当者と区役所にて打合せする日時等を調節します。
⑥ 資料の貸出し
貸し出される資料といっても、窓口にて閲覧が可能な資料がほとんどと思っていましたが、それは2割ほどしかなく、8割は区役所での内部でのみ使用される資料でした。 そのため、新たに確認する資料がかなりありました。
ただ結局一度も使わない資料も多くあったのが正直なところです。
資料の貸出しの際に、区担当者より測量箇所の指示があります。
もともと位置指定道路が寄付された道路であり、その寄付された部分を復元できる範囲のみを測量すると思っていましたが、街区を広く測量しなければならないとのことでした。
街区の測量まで必要ないと思っていたので、その指示を聞いた際に、板橋区の境界確定は手間が掛かるとの噂は本当なんだなと感じました。
貸出された資料は、返却する必要があるため、大切に扱いましょう。また、複写等も禁止である旨のスタンプも押されているため、コピーして控えとして持つことは出来ません。
⑦調査・測量
貸出し資料を参考に、区担当者の指示箇所を測量調査をします。
その指示箇所について、どれだけの誤差等があるかどうかを測量調査する必要があります。
また、区の基準点や他の道路成果のトラバー点を使用して測量する場合、そのトラバー点の精度について確認する必要があります。 その他にも、ヘルマート変換をおこなった場合には、その計算書類も必要になります。
以下の資料を担当者に確認してもらいました。
- ・指示点の辺長または位置の誤差についての資料
- 既知点から測量する場合は、その既知点であるとラバーの精度について資料
- ヘルマート変換等をした場合は、ヘルマート変換等の計算資料
以上の資料を提出して、道路をどのような線形にするのかを、区担当者と協議します。
以上の提出資料に対する区の担当者からの回答に驚きました。
役所の担当者の方は、縮尺係数をかけるかの判断も、他の図面を考慮しながら確認されており、既存の図面に関しては、縮尺係数を掛けない方が整合性が取れるため、役所の数字に直して欲しいとのことでした。
正直、今までこのようなことを言われることはなかったので、驚きました。
⑧線形打合せ
これまでの測量調査により、資料と現地の整合性が取れたら、線形打合せに入ります。
区が提供しているフロー表は、電話で予約をして打合せをすると記載がありましたが、 今回はそのような打合せはなく、貸与された図面を参考にして、道路の線形を検討してほしいとのことでした。
ただ貸与された図面は古く、急傾斜の地域のためか、図面通りの復元は困難で、どのような道路の線形にすればいいか悩んでいました。
どうしてもいい案が思いつかなかったため、役所の方に確認したところ、ある程度線形について役所にて想定線形があったみたいです。
そして、役所の方の通りに復元したのですが、どうしても線形が合いませんでした そのため、結局、少し想定していた道路の線形を崩して境界を確認することになりました。
ここで注意しなければならないのですが、該当地先の接道道路の種別が位置指定道路であったため、建築時などは道路区域境界と位置指定道路の線形が異なることになる可能性があることは注意しなければなりません。
⑨ 現地立会日の調整、⑩ 現地立会・協議
道路の線形の打合せが終わり、線形についての検討図が作成出来れば、現地にて立ち合いです。 この立会は、一般的な立会で、現地に仮のペンキの印をして、確認してもらいます。
道路に関しての説明は、区役所の方が行ってくれるため、その点は楽が出来るかもしれません。
また、人の境界についての説明を聞くことは、めったにない大切な機会です。
補足:申請事項の変更
立会の結果、申出した対象の土地よりも、広範囲に道路の境界確認が出来るとのこととなり、申請土地の変更をすることになりました。
ここで注意しなければならないのが、立ち合い日以前に、変更届の日付を設定しなければならず、必ずその日付以前の登記官の認証入りの登記事項証明書が必要になることです。
立ち合い日は変更することが出来ないため、立会が終了後、登記ネットで登記事項証明書を取得しました。
急いで法務局を行かなくても、当日日付の登記事項証明書を取得でき、郵送か時間がある際に窓口に受け取ることが出来るため、とても便利な時代になったと感じました。
⑪現地標示物(指定箇所のみの支給)、⑫現地標示
現地標示物としての境界標を、立会時に貰っていなかったため、板橋区役所の道路境界の窓口で、書類を書いた上で受領しました。
板橋区の境界標は、道路の線形の変化点や終端点等でない箇所は、民間の境界標を設置するため、どのような境界標を設置するかは、事前に確認することをお勧めします。
板橋区の場合は、最後に確認測量があり、引照点も含めて5mm以内に収める必要があるため、いつも以上に慎重に境界点を設置しました。
⑬下図の作成・提出、⑭下図のチェック
立会現地標示物の設置が完了したら、原図の元となる下図を作成します。
ここで、注意することが、境界点一点に対して引照点3点設定するのが原則ですが、それ以上の引照点を記載することを求められるほか、境界点については詳細図も記載しなければなりません。
引照点は、ブロック角などがいいとのことでしたが、周りにブロックや塀等がない場合は、後の⑮現地確認測量の際に区役所から引照点について指示があります。
⑮現地確認測量
一般的な現地確認測量は、点間の辺長について対辺測量を行い、その辺長が誤差の範囲かの確認することが一般的だと思います。
しかし、板橋区の場合は、放射観測で、水平角と水平距離を確認するというものでした。 水平角の基準を0セットに設定後、水平角と距離を測定し確認します。
このようなような確認方法は、辺長だけで確認するよりも、精度を確保できるほか、引照点を新たに追加する場合に、再度現場で確認する必要がなくなるため、採用しているんだろうなと感じました。
⑯原図の作成、⑰署名・捺印
原図に署名をしてもらいます。 申請者は実印ですが、隣地の人には認印で頂きます。
A2用紙に記入して頂く関係上、郵送での対応は少し難しいです。
⑱原図の提出
すべての利害関係者等から署名・捺印を頂いたら、その原図の写しを役所と利害関係者等の人数分用意します。
原図は和紙の場合は折りたたむことが出来ますが、それ以外の用紙の場合は、折ることは厳禁になります。
また、A2の原図の写しは、A4に収まるように折りたたみ、提出します。
今回は、申請者が一人、隣接者が一人であったため、それに役所の分を加えた3枚写しを提出しました。
A2のコピー機は池袋のキンコースが一番近いです。
板橋区役所まで、徒歩で30分くらいの位置にあり、キンコースでA2のコピーをしてから提出する場合は、電車で板橋区役所に行くより早いです。
また、途中に東京法務局豊島出張所があるため、登記事項証明書を取得したりなどすることが出来ます。
原図の提出の際に、貸与された資料一式をお返しします。
⑲通知書(確認書)の決裁・交付・受領
提出後、決済が完了すると、板橋区役所から連絡が来ます。 受け取る場合は、受領に必要な番号と印鑑が必要になるため、受領番号を担当者の方から教えて頂きます。 〇〇ー△△△△のような番号を控える必要があります。
ただ、担当者から直接受け取る場合は、受領番号は必要ないとのことです。
しかし、担当者の方は別の現場で不在が多いので、必ず番号は控えて行きましょう。
申出から完了通知書の決済まで、3カ月程でした。
まとめ
最後まで読んで下さり、ありがとうございました。
正直なところ、板橋区の公共用地の境界確定は出来れば、避けたいなとの思いがありました。 ただ、手間が掛かると言われていた板橋区の案件が無事に完了し、土地家屋調査士として少し自信がついたのかもしれません。