土地家屋調査士は、CADソフトによる作図のデジタル化や、トータルステーションなどの測量機器の進化により、その仕事内容は時代とともに変化してきました。
私自身、手で作図したり巻き尺での測量の経験はないのですが、CADによるデジタル上での作図等が一般的になり、土地家屋調査士の業務は大きく変化したと先輩方から聞いています。
しかし、デジタル化などにより便利に変化していく中、これに対応できない場合は土地家屋調査士として仕事を失っていくことに繋がり、土地家屋調査士にとって技術の変化に対応していくことは死活問題となります。
今回は、このような土地家屋調査士が今後必要になってくるだろうスキルに関して記事にしました。
まだ、土地家屋調査士業界に入って間もない私ですが、今後どのようなスキルが必要かと考え、その中で私の取り組みに関しても書いてます。
色々ご意見はあると思いますが、若手の土地家屋調査士の一つの意見として読んで頂けたらと思います。
写真や画像に関する知識(ドローン測量)
ドローン測量等をするために、 写真や画像に関する知識・スキルが必要になります。
写真や画像に関する知識は、デジタル写真・画像の知識、アナログ写真・画像の知識、またその共通した知識など様々分けることができますが、どれもドローン測量で必要な知識となります。
国土地理院では、無人航空機(UAV:Unmanned Aerial Vehicle 通称ドローン)を測量で使用できるように、「UAVを用いた公共測量マニュアル(案)」及び「公共測量におけるUAVの使用に関する安全基準(案)」を作成し、平成28年(2016年)3月30日に公表しました。また、「UAVを用いた公共測量マニュアル(案)」につきましては、平成29年(2017年) 3月31日に改正しました。
国土地理院:https://psgsv2.gsi.go.jp/koukyou/public/uav/index.html
上記のように測量業界では、ドローン測量等が今話題になっていますが、航空機から測量する写真測量という測量分野は以前からあり、昔から空から測量することは行われていました。
私たちが普段見る地形図は、この写真測量によって作られており、その地形図をもとに様々な地図が出来ているため、この写真測量は番身近なものを作る測量と言えるかもしれません。
ただ、この写真測量は航空機や高性能なコンピューターなどの設備を使用しなければならないことから、設備に対して投資できる資本がある事業者でなければ参入することが出来ず、小規模・中規模の土地家屋調査士事務所や測量会社はほとんど扱ってませんでした。
そのような中、技術が進歩し、高性能なコンピューターが安価に手に入ることが出来、またドローンが一般的に普及したことにより、これらの設備に対する障壁がかなり低くなりました。
そのような技術が普及したのは、ドローンに関する技術に関する大衆化はもちろんですが、膨大なデータを持つ撮影画像を効率よく処理できるパソコンも以前に比べかなり安価に手に入れることが出来るようになったことも大きな要因でもあります。
以上の技術の進歩と合わせせて政府の測量分野の新しい技術の導入推進により、ドローン測量等の障壁が低くなり、ドローン測量が広まることは予想できます。
そのため、測量や土地家屋調査士業界に入ってくる方は、ドローンを活用した写真測量に関して、トレンドを把握して、時代に乗り遅れないように注意深くアンテナを察知し、勉強していくべきだと思います。
ただ、今はドローン測量などを行う事務所は少なく、すぐに実務に直結しないことから、現時点で上記の目的のために今現時点で学ぶことは非効率だと思います。
そのため、特に現時点での業務に必要でなければ画像編集や写真について最低限の知識を勉強をすることをオススメします。
例えば、アドビがリリースをしているphotoshop(又はフリーソフトのGIMP)などで画像編集について勉強したり、また一眼レフカメラの性能を活かした写真を撮る技術を学んでいくと、ドローン測量をいざ行うことになっても、写真や画像の扱い方に関して知識を流用することができ、抵抗なく取り組むことが出来ると思います。
また、写真の撮り方や画像編集は日常でも使う場面が多いため、たとえドローン測量を仕事としてしなくても、その学んできたことは無駄になりません。
また、画像編集ソフトを扱うことで、測量CADの操作に関しての知識も深まると思います。
ラスタデータやベクタデータ、そしてレイヤの概念など測量CADと画像編集ソフトは共通している部分が多くあります。
私は、サイト制作などをしている関係から、 写真の撮り方や画像編集を習得するメリットが多くあります。
ドローンによる写真測量が広がった際には、画像と写真についての知識を転用して時代に乗り遅れないように、時代の移り変わりに敏感に対応していこうと思ってます。
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プログラミングとWEBに関する知識(GIS)
災害対策等のための手段としてGISの利用が広まる中、プログラミング(特にデータベースとやり取りするプログラミング)とWEBに関する知識が必要になる。
地理情報システム(GIS:Geographic Information System)は、地理的位置を手がかりに、位置に関する情報を持ったデータ(空間データ)を総合的に管理・加工し、視覚的に表示し、高度な分析や迅速な判断を可能にする技術である。
国土地理院:https://www.gsi.go.jp/GIS/whatisgis.html
高速通信5Gなどの通信技術の発達や新型コロナウィルスによるリモートワーク導入の広がりなどもあり、プログラミングが一つの流行になってます。
このプログラミングに関する知識ですが、土地家屋調査士におけるGISの分野に活きてきます。
特に、プログラミングの中でもデータベースから適切な情報を選択し、その情報を扱いやすいように加工し、見やすいように表示するためのプログラミング技術が必要になります。
例えば、GISの一つとされている調査士mapも、データベースから情報を抜き出し、適切な情報に加工し、ブルーマップと重ねて表示するなどの上記の技術がなければシステムとして成り立ちません。
この技術は、広くwEB業界でも行われており、サイトやブログを作成するWordPressも同じような仕組みで動いています。
そして、そのシステムを利用するために、サーバーからインターネットを通じてサービスを提供する必要があり、プログラミングだけではなくインターネットに関する知識もまた必要になります。
土地家屋調査士は行政が持っているデジタル情報の開示の恩恵を多く受けており、測量の基準点の成果標や道路台帳などが、インターネットから取得することが出来るようなったことは、多くの土地家屋調査士が感じられていると思います。
ただ、今後は利用するのではなく、自らGISを作りそれを提供する時代が来るのではないかと思います。
測量成果の情報を集めて、その情報を活かせるかどうかが、勝負になってくるのかと思います。
私は、GISの可能性を感じ、少しではありますがプログラミングを勉強しています。
勉強する以前はプログラミングはその難しさから専門家である技術者だけが必要であり、 技術者ではない者は必要ではないと感じていました。
しかし、プログラミングを学んでいく中で、その考え方は変化していきました。
それは、プログラミングは新たに一からものを作るためにあるものではなく、設計図が既にあり、天才が作ったその設計図を論理的に当てはめ効率的に製品を作る技術との認識に変わっていったからです。
これにより、プログラミングへのイメージが変わりました。
プログラミングの知識は新たなに作るのではなく、天才が作った設計図の仕組みや構造を理解し、効率的にいろいろなものを作っていくための勉強と捉えて、私自身は今後のGISの普及に備えています。
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まとめ
今後、GISやドローン測量などに備えるために、以上のことを少しではありますが勉強しています。
土地家屋調査士業務は試験合格をしただけでは、出来るようになりません。
測量実務や不動産の調査方法を実際に身に着けるために、多くのことを学ばなければなりません。
そのことは、一人前の土地家屋調査士になるためには、かなりの時間が掛かるとも言えます。
このような中、必要になるか分からない新たな技術を勉強することは、相当な 学習コストになると思います。
学習コストを減らしながら、似たようなスキルで今必要とされていることを少しでも勉強し、取り組んでいくことは将来的に大きな差が生まれると思ってます。
私自身、少し大変ですが、今やるべきことを見失わない範囲で、色々なスキルに挑戦していきたいと思ってます。