同じ不動産を扱うことから、宅地建物取引士と土地家屋調査士はとても相性がいいです。
今回は、宅地建物取引士と土地家屋調査士のダブルライセンスについて記事にしていこうと思います。
宅地建物取引士の仕事とは
宅地建物取引士の独占業務は,『重要事項説明』『重要事項説明書(35条書面)への記名・押印』『契約書(37条書面)への記名・押印』の3つです。
また、営業所に5人に1人の割合で宅地建物取引士を設置しなければならないという設置義務が課されています。
重要事項説明とその記名押印
(重要事項の説明等)第35条 宅地建物取引業者は、宅地若しくは建物の売買、交換若しくは貸借の相手方若しくは代理を依頼した者又は宅地建物取引業者が行う媒介に係る売買、交換若しくは貸借の各当事者(以下「宅地建物取引業者の相手方等」という。)に対して、その者が取得し、又は借りようとしている宅地又は建物に関し、その売買、交換又は貸借の契約が成立するまでの間に、宅地建物取引士をして、少なくとも次に掲げる事項について、これらの事項を記載した書面(第五号において図面を必要とするときは、図面)を交付して説明をさせなければならない。
省略
7 宅地建物取引業者は、前項の規定により読み替えて適用する第一項又は第二項の規定により交付すべき書面を作成したときは、宅地建物取引士をして、当該書面に記名押印させなければならない。
宅地建物取引業法35条
契約書(37条書面)への記名・押印
(書面の交付)第37条 宅地建物取引業者は、宅地又は建物の売買又は交換に関し、自ら当事者として契約を締結したときはその相手方に、当事者を代理して契約を締結したときはその相手方及び代理を依頼した者に、その媒介により契約が成立したときは当該契約の各当事者に、遅滞なく、次に掲げる事項を記載した書面を交付しなければならない。
省略
3 宅地建物取引業者は、前二項の規定により交付すべき書面を作成したときは、宅地建物取引士をして、当該書面に記名押印させなければならない。
宅地建物取引業法37条
専任の宅地建物取引士の設置義務
(宅地建物取引士の設置)第31条の3 宅地建物取引業者は、その事務所その他国土交通省令で定める場所(以下この条及び第五十条第一項において「事務所等」という。)ごとに、事務所等の規模、業務内容等を考慮して国土交通省令で定める数の成年者である専任の宅地建物取引士を置かなければならない。
宅地建物取引業法31条
(法第31条の3第1項の国土交通省令で定める数)第15条の5の3法第三十一条の三第一項の国土交通省令で定める数は、事務所にあつては当該事務所において宅地建物取引業者の業務に従事する者の数に対する同項に規定する宅地建物取引士(同条第二項の規定によりその者とみなされる者を含む。)の数の割合が五分の一以上となる数、前条に規定する場所にあつては一以上とする。
宅地建物取引業法施行規則15条の5の3
試験合格と資格の登録について
宅地建物取引士試験に合格しても、それだけで宅地建物取引士になれるわけではありません。
住所地の都道府県知事に対して、登録の申請をしなければなりません。
ただ、合格したとしても、すぐに登録できるわけではありません。
不動産取引等の実務経験が2年間ある方はすぐに登録できますが、2年間の実務経験がない方は実務研修を受けて考査に合格することことで登録することが出来ます。
ちなみに、私は宅地建物取引主任者試験に合格した当時、不動産業者に入社予定だったため、登録講習を受けるように指示があり受講しました。
LECで実務者講習を受けたのですが、通信教材と2日間のスクーリングの形式が行われ、実務家の講師のもと実際に重要事項説明書の作成を行いました。
受講日の最終日に考査があり、それから一ケ月後くらいに結果が届き、合格していれば無事登録をすることが出来ます。
千葉県はまず県庁への登録申請を行います。
その後、登録が完了したら、宅地建物取引主任者証を発行しなければならないのですが、これは宅地建物取引協会にて受け取ります。
都道府県ごとに違うと思いますが、申請と受領する機関が異なることもあるため、注意が必要です。
業務としての相性は抜群
土地家屋調査士の一番の仕事を頂けるのは不動産仲介業者の方です。
土地を売買する際は、境界について重要事項説明しなければならないことから、境界確認業務が生じます。
その境界確認業務を土地家屋調査士が行うのです。
土地売買があれば、そこには土地家屋調査士の土地の境界確定業務がここでは生まれるのです。
ダブルライセンスの恩恵はあまりない
宅地建物取引士と土地家屋調査士は業務上お互いに密接に関連する業務ですが、2つの資格を持ちか活躍することは難しいと考えれます。
都道府県ごとに違いはありますが、原則は、土地家屋調査士は独立業であり、また宅地建物取引士は業務への専任する必要があるからです。
つまり、土地家屋調査士として独立している限り、宅地建物取引業へ専任することが出来ないと判断されてしまうからです。
土地家屋調査士が宅地建物取引業を行うためには、たとえ自らが宅地建物取引士の資格を保有したとしても、別に専任の宅地建物取引士を選任しなければなりません。
しかし、土地家屋調査士でありながら、専任の宅地建物取引士になることが可能となる場合があります。
ダブルライセンスで業務をするには
土地家屋調査士でありながら、専任の取引主任者として宅地建物取引業をするためには、都道府県ごとに違いますが、いくつか方法があります。
ここでは、東京都と埼玉県と大阪府の事例を紹介していきますが、都道府県ごとに運用が違うため、管轄のごとにご確認お願いします。
東京都の場合は、『社会通念上』であることがポイントです。
専任の取引士の「専任性」とは次のように、「常勤性」と「専従性」の二つの要件を充たさなければなりません。①当該事務所に常勤して、②専ら宅建業の業務に従事することが必要です。「専任」に当たらない例として①他の法人の代表取締役、代表者又は常勤役員を兼任したり、会社員、公務員のように他の職業に従事している場合、②他の個人業を営んでいたり社会通念上における営業時間に、宅建業者の事務所に勤務することができない状態にある場合、③通常の通勤が不可能な場所に住んでいる
宅地建物取引業免許申請の手引 東京都住宅政策本部
場合等は、専任の取引士に就任することはできません。
と記載があります。つまり社会通念上『常勤性』と『専従性』があれば、土地家屋調査士業をしても、専任の宅地建物取引士となることが出来ます。
ただ、2019年くらいに住宅政策本部に直接確認したところ、土地家屋調査士と宅建業のどちらもが同一個人事務所なら認められるとの回答でした。
ただ、一概に個人事務所でなければならないとするのではなく、個別具体的に決めて行って欲しいものです。今は、副業を推奨していることもあり、実務上の運用が変わっているかもしれません。
埼玉県の場合は、『同一個人事務所』であることがポイントです。
専任の取引士は、同一事務所内での業務に限り他の業務を兼務することができます。
また、行政書士等の士業は、同一個人事務所のみ認められるとのことです。
一方、建築士の場合は、法人でも認められる点が納得できないですが。
大阪の場合は、『自由業が個人事業主で同一建物内』であることがポイントです。
専任の宅地建物取引士が同一建物内で行政書士業等の自由業を兼業する場合に認められるとのことです。
埼玉県の同一個人事業主の必要があるとの記載はないので、埼玉県よりは緩い感じでしょうか。
以上の都道府県だけでも、手引きの記載事項上の専任性の判断が違うところが面白いです。
まとめ
ここまで読んでくださり、ありがとうございます。
宅地建物取引士(宅地建物取引業)と土地家屋調査士はとても相性がいい資格です。
ただ、どちらの業も行おうとすると、専任の宅地建物取引士の要件が厳しいため、ほかの方に専任の宅地建物取引士として登録してもらう必要があります。
建築士に関しても専任の登録はありますが、実際土地家屋調査士とのダブルライセンスの方は多くいることもあり、専任の宅地建物取引士の要件がとても厳しいのがご理解いただけると思います。
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